そんなに裕福でもないというのに、どこに新しい着物を買う余裕があったのか。

「そんな私の為に。」

「加恵の為だけじゃないよ。和弥君の為でもあるんだ。医大に合格したぐらい優秀な人材の母親が、みすぼらしい恰好で、卒業式に臨めないだろう。」

「まあ。」

和弥の事をそこまで思ってくれる悟志さんに、感謝しきりでした。

「ありがとう。」

「ううん。」

家族みんなで、和弥の事をお祝いする事に、ただただ感謝でした。


私は、その新しくあつらえた着物を着て、和弥の卒業式に行ったんです。

和弥は、立派でした。

制服はお下がりで、少し綻びも見えましたが、誰にも負けず劣らず、誇らしい笑顔で、卒業式を終えました。

本当に心から嬉しくて、帰り道、声を掛けずにはいられませんでした。