「和弥が!和弥が私に会いに来たんです!」

悟志さんは、後ろを振り返って、キョロキョロと辺りを見回しました。

「俺が見てくるよ。」

「お願いします。」

悟志さんからカバンを預かると、彼は和弥を追いかけて、走って行きました。

「和志、お兄ちゃんと会えるといいね。」

和弥に会いたい。

そればかりを考えていました。


1時間程経ったところ。

悟志さんは、家に戻ってきました。

「やっぱり和弥君だったよ。」

「それで?」

「呼んだんだが、途中で逃げられてしまった。」


逃げられた?

私は、がっくりと力が抜けました。

どうして、和弥。

悟志さんの事、忘れてしまったのかしら。


この時、和弥に会えなかった事を、しばらく私は引きずっていました。