それからしばらくして、私は男の子を産みました。

「和弥君の弟だ。和志と名付けよう。」

悟志さんがそう言ってくれた時には、ああ、和弥の事忘れないでいてくれたのだと、嬉しかったですね。


そんなある日。

生まれたばかりの和志を連れて、庭先の周りを散歩していた時でした。

「和志。あなたにはね、和弥というお兄ちゃんがいるのよ。」

その時でした。

ふと後ろの方から、視線を感じたんです。

辺りを見回すと、男の子がスーッと走って行くのが見えました。

「和弥?」

あの男の子は、和弥かもしれない。

和志を抱いたまま、必死に追いかけました。

でも追い付かずに、男の子はどんどん離れて行ったんです。


そんな時、ちょうど悟志さんが帰って来ました。