ある時、洗濯物を干していると、お義母さんが私の名前を呼んで、庭先に置いてある椅子に、腰かけているのが見えたんです。

「加恵。自分の人生を、悔やんでいるかい?」

いつになく、優しい言葉でした。

「いいえ。仕方ないと思っています。」

後悔する事と言えば、和弥の事。

でも、高坂の家の事を考えると、置いて行く事も仕方ないと思っていました。

「そうかい。でも悔やんでばかりじゃダメだよ。これからの幸せも見つけないとね。」


私のお腹の中に、子供が宿っていると知ったのは、それから2週間後でした。

「やれやれ。子供ができれば、もう高坂の家にも、戻る事はないだろうしね。」

そう言ってお義母さんは、実家に帰って行くのでした。