「そんな事ない!」

「だったら、何て言われたのか、教えてくれ。」

和弥は、口をへの字に曲げて、仕方なく口を開きました。

「……卑しいって言われた。」

「え?」

「父親のいない子は、卑しいって言われた。」

私は伊賀さんと、顔を見合わせました。

「そんな事を言われたの。」

ただ病気で亡くなっただけだと言うのに、さっきまでの表情は忘れて、私も腹立たしくなってきました。

「よし!相手の親が乗り込んできたら、俺が言ってやる!」

「おじさんが?」

伊賀さんは太ももを叩くと、一緒に怒ってくれました。


そんな様子が、もう家族3人のようで。

私はこのままの時間が、ずっと続けばいいと思ったんです。

その気持ちは、伊賀さんにも伝わったようで、結婚しようと言われたのは、その数日後でした。