「和弥君。お母さんには話しておいたほうがいいぞ。後で、相手のお母さんが、家に来るかもしれないからな。」

その言葉に驚いたのか、和弥は堰を切ったように、しゃべり始めました。

「僕は悪くない!相手が悪いんだ!」

「だから、何をしたの!」

「悪口を言うから、殴ってやった!」

「殴ったって……」

私は、気が遠くなりそうでした。

「加恵さん、しっかりして。」

そんな私を支えてくれたのが、伊賀さんでした。

「和弥君。どんなに腹が立っても、殴ってはいけないよ。悪口を言わてたんだって?どんな悪口だ。」

「……言いたくない。」

「和弥君。」

私達を疎ましく思ったのか、和弥は背中を向けてしまいました。

「本当は、そんなひどい悪口じゃなかったんじゃないか?」