その時だった。

「和弥さん。お弁当、持って来ましたよ。」

「おう。」

妻になったばかりの彩が、病院にお弁当を届けてくれた。

ちなみに彩も、同じ医者の学校を出ていて、3人共学友だった。


「彩。結婚、おめでとう。」

「ありがとう、司さん。」

司はここぞとばかりに、自分の座っていた椅子を彩に渡し、自分は立ん坊を決めた。

「はい。今日もいっぱい食べてね。」

「ありがとう。」

彩が持って来たお弁当の蓋を開けると、これまた豪勢なおかずが並んでいた。

「いいなぁ、愛妻弁当。」

「司も早く、結婚しろよ。」

「相手がいれば、直ぐにでも結婚してるさ。」

半分嫌みを交えながら、みんなで笑っていた。


そして司は、あの話を持ちだした。

「そうだ。彩だったら、和弥の昔話を聞いた事があるのか?」