僕が話し終えると、彩も司も、茫然と口を開いていた。

「いや、すまん。てっきり、エリートだと思っていたから。まさかそんな生い立ちだとは、思っていなかったよ。」

司は、気を遣っているのか、口を手で覆っていた。

だけど、彩は違っていた。

彩は涙目で、俺の手を握ってくれた。

「よく話してくれたわね。」


一つだけ気にかけていたのは、二人共こんな話をして、僕から離れて行ってしまわないかという事だった。

「……貧乏な育ちだったのだと、僕を蔑まないのか?」

「まさか!返って、あなたの芯の強さを見た気がするわ。」

彩は、涙を拭きながら、僕を励ましてくれた。

「俺だってそうだ。貧乏がなんだ。そんな事で、おまえの元から離れて行くもんか。」

僕の中で、心が揺さぶられた気がした。