「お兄さんは、どこまで行くの?」

妹の方が、僕に聞いて来た。

「東京だよ。」

「東京!?東京だって。お兄ちゃん。」

「すごいなぁ。」

二人共、僕の事を尊敬の目で見ていた。


「東京の大学に受かってね。これから、一人暮らしをするんだ。」

すると二人は、顔を見合わせた。

「実は僕達にも、会った事のない兄がいるんです。」

ハッとした。

この二人は、知っているんだ。

僕の存在を。

「兄も、東京の大学に受かって、一人暮らしをするんだって、聞きました。もしかしたら、お兄さんと会うのかな。」


目に涙が溜まった。

君たちの、その会った事のない兄と言うのは、僕の事だよ。

それを言いたくて言いたくて、仕方がなかった。

「そうかもしれないね。」

そう言って、二人が途中の駅に降りるまで、僕達は限りなく話したんだ。