兄の方は、みかんを嬉しそうに向いて、最初の一房を妹にあげた。

その一房を食べて、妹は目をキラキラさせながら食べた。

「美味しい。」

僕は、自然に微笑んだ。

「もう一個、あるよ。」

袋から取り出したみかんを、妹は今度こそ受け取ってくれた。

「美味しいね、お兄ちゃん。」

「ああ、そうだな。お兄さん、ありがとうございます。」


お兄さん。

その言葉が、僕の胸の中に響いた。

泣きそうなくらい、嬉しかった。

名前を知らない僕への、一般的な呼びかけで会った事は、分かっていた。

でも弟に、兄さんと呼ばれて、泣いてしまう程嬉しかったんだ。


僕も二人の一員になりたくて、袋からみかんを取り出した。

皮を剥いて、一房ずつ食べていると、本当の兄妹のように思えた。