電車が動き出すと、斜め前に座っている妹が、母親に手を振った。

そうか。

お母さんと言っていたな。

この子達は、母親の子供。

つまりは、僕の父親違いの弟と妹か。


目の前に座る二人を見て、不思議な気持ちが沸き上がってきた。

兄妹と言うモノに触れた事がない僕が、目の前の二人に愛おしい感情を抱いている。

初めて会うと言うのに、どうしてなんだろう。


ふと、出発の時に、祖母から貰ったみかんがある事に気づいた。

僕は立ち上がって、その袋を取り出し座ると、みかんを袋から出した。

「これ、食べるかい?」

まずは妹の方に、みかんを差し出したけれど、妹は警戒して兄の方を見た。

「頂こう。」

僕の差し出したみかんは、兄の方に渡った。