薄黄色の綺麗な和服。

それは、化粧をしていて、口紅を塗っていた母親に、とっても似合っていたんだ。

さぞかし、家が裕福なんだろうな。

そんな綺麗な着物を着て。


一方で僕は、僕は……

学費も出せずに、人の手を借りて。

みんなが新しく新調してもらった制服でさえ、お下がりで。


なぜ、そんな裕福な家庭なら、僕を連れて行ってくれなかったのか。

連れて行ってくれたのなら、僕は学費にも制服にも、困らなかったのに。

僕は、歯ぎしりをしながら、母が次に何て言うか、待っていた。

「和弥。どうしたの?お母さんが来ること、あんまりよくなかった?」

「ああ。」

僕は即答した。

答えを待っていたのに、それを否定したんだ。

「捨てた息子だったら、そのまま捨てておいてほしかったね。」


そう言って僕は、泣き崩れる母親を置いて、学校を後にした。