卒業式が終わって、一人帰る時だった。

祖父母はもう老体で、卒業式に出席できないでいた。

一人で卒業アルバムを持って、歩いていた時だ。


「和弥。」

ふいに聞き慣れた声と、化粧品の甘い香りがした。

顔を上げると僕は、茫然とした。

あの、僕を捨てた母親が、目の前にいたからだ。

「久しぶり。卒業おめでとうね。」

そんな言葉を掛けられたけれど、僕はうつむくばかりだった。


「やい、高坂の奴。制服がボロボロだぞ。」

「貧乏やーい!」

いつもは、無視するヤジも、この時ばかりは癇に障った。

「うるさい!黙れ!」

その大きな声に、母親も驚いていた。


久しぶりにあった母親の前で、貧乏だとやじられたから?

それもあった。

でももっと、癇に障ったのは、母親が着ている衣装だった。