「進学、おめでとう。」

「ありがとうございます。」

僕は黒岩先生に、深く頭を下げた。

「ところで、制服はご準備できましたかな。」

そこで、僕と祖母は顔を見合わせた。

そうなんだ。

学費の他に、入学するには、諸費用がかかる。

学費の事で頭がいっぱいで、そこまで気持ちが届かなかった。


「お恥ずかしい話、これからで。」

祖母が、小さな声で言うと、黒岩先生は風呂敷を開けた。

「それはよかった。これは同じ学校を今年卒業した息子の制服なんですが、よかったら、使って下さい。」

僕と祖母は、目を大きくしながら驚いた。

「もちろん、和弥君がよければ話なんだが。」

「そんな、勿体ない話です。有難うございます。」

僕は、心から黒岩先生に感謝した。