陽が落ちて、僕は帰り道をトボトボと歩いていた。

しばらくして、誰かが僕の名前を呼んでいる気がした。

直ぐに、脇道に隠れた。

そして現れたのは、あの伊賀のおじさんだった。


どうせ見つかったって、叱られるだけだ。

僕は、伊賀のおじさんが向こうに行くのを見ると、一気に駆け出した。

走っている間、涙が溢れた。


あの伊賀のおじさんが、僕から母親を奪ったんだ。

僕は、母親に捨てられたんだ。

封印していた気持ちが、また爆発した。

僕はいつの間にか、嗚咽を漏らし、涙を拭きながら、林の中を走っていた。


家に帰って来たのは、それからしばらくした頃で。

「和弥!いつまで、遊んでた!」

「ごめん、じいちゃん。」

祖父の叱りも流して、僕は一人の世界へと、落ちて行った。