そろそろ、桜が咲く頃。

僕にも、春がやってきた。


「聞いたよ、和弥。結婚するんだって?」

「ああ。」

同じ病院の医者で、友人でもある司は、その噂を聞きつけ、早速僕のところへ来てくれた。

ちょうど、お昼休みの時間で、椅子に座りお茶を飲んでいた僕は、窓から見える桜を見ていた。

「相手は、彩か。羨ましいな。」

「何がだよ。」

「何がって、彩はこの病院の一人娘なんだぜ?将来は、安泰だろ。」

「そうだな。婿養子になるからな。」

それを聞いた司は、近くの椅子を持って、僕の隣に陣取った。

「それも聞いたぞ。お前が婿養子になるって話。」

「本当だよ。」

「誰も嘘だなんて、疑ってはいない。」

司は、自分のお茶を淹れ、僕にも残りを継ぎ足してくれた。