「彩っ……!」


体育館の入口のところで彩加の姿を見つけた私は、咄嗟に彼女のことを呼んでいた。


親友の彩加だけは“あちら側”には行かないはずだと、この状況はきっとなにかの間違いなのだと自分自身に言い聞かせ、彼女の傍に駆け寄ろうとしたけど……。


私に気づいた彩加は、目を見開いたあとであからさまに顔を背け、逃げるように体育館に入ってしまった。


途端に感じたのは、絶望。


地面がガラガラと崩れていくような気がして、真っ逆さまに落ちる自分自身の姿が脳裏に浮かんだ。


他の生徒たちは突然止まった私に怪訝な顔をしながらも体育館に入って行き、何人かにぶつかられたことを感じながらも動けない。


「松浦さん、親友にまで見放されたんだー」


そんな私の耳元で落とされたのは、嘲るような声。


心臓が鷲掴みにされたように苦しくなって、その聞き覚えのある声はあの四人のうちの誰かのものだということを理解した直後、踵を返して走り出していた。


呼吸すら上手くできないのに無理に走ったせいで、あっという間に息が上がる。


どうしよう……。どうしよう、どうしよう……。


頭の中ではその五文字が繰り返し流れるけど、絶望に包まれた心が考えることを拒絶していた。