「面倒だなんて思ってないよ」


無駄だったとは思ったけど、面倒だとは思わなかった。


勉強は捗らなかったとは言え、教えるのは自分の勉強にもなるし、なによりも頼ってもらえたことについては今も悪い気はしていないから。


ただ、もしまた同じことを頼まれたらどうしようかと身構えてしまって、笑顔が引き攣りかけていた。


「あっ、うちら、今日からは自力で勉強することにしたから」


その言葉にホッとしたけど、そもそも今日以降のことは約束していなかったはず。


それなのに、あえて宣言のようにも取れる言い方をされたことが引っ掛かって、なんだかモヤモヤとした。


「松浦さんもうちらみたいなバカに付き合ってられないでしょ?」


「そうそう。昨日もつまんなそうだったもんね」


「たしかに! 最後なんてため息ついてたし」


「ずっと学年上位の松浦さんは、レベルが違うもんねー」


教室中に響くような声で会話を始めた四人を前に、背中に嫌な汗が伝った。


あぁ、そうか……。私……私は……。


きっと、失敗してしまったのだ。


思い当たるのは昨日のことだけで、ミスをしたのはその時しかない。


それに気づいた時、私を見るクラスメイトたちの目はなんとも言えないものだった。