公園では、今日もトイレ付近のベンチに腰を下ろした。
おれが意を決した直後、入野あかねは「飲み物買ってくる」と腰を上げた。
一歩踏み出してから振り返り、「紫藤 廉は?」と問う。
「要らない。おれは、貸しを作るのは好きだが借りを作るのは好きじゃないんだ」
入野あかねはふっと苦笑し、「嫌な男ね」と肩をすくめた。
「そんな男に助けを乞うているのはどこの誰かな」
「だって紫藤 廉が……お前にはおれが必要だみたいなことを言うから」
「洗脳成功だな」
「本当に嫌な男」
入野あかねはこちらを振り向いた。
「本当に助けてくれるのよね」
「ああ、助けるよ」
「……もしも、本当にわたしで遊んだだけならただじゃおかないわよ」
「はいはい。ちょい殺しでも半殺しでも全殺しでも、好きにしたらいいさ。それより早く買ってこい」
おれが虫を払うように手を動かすと、入野あかねは口角を上げた。
「紫藤 廉も、行きたいのなら漏らす前に済ませておきなさい」
すぐそこにあるからと続ける彼女へ、おれは声を上げて笑った。
「うるせえよばーか」
小さく笑い、入野あかねは自動販売機の方へ歩き出した。