公園を出て間もなく、空は太陽の気配を消し、濃紺色に変わった。
入野あかねは無事だろうかと考える。
彼女の身になにか不運が起こり、直前まで入野あかねがおれといたことが知られた場合には、入野家でのおれの印象は悪くなる。
それは構わないのだが、接触を避けられるようになっては困る。
いざという場合には彼女に手を貸すつもりだ。
何気なく足元から左方へ目をやると、茶色の猫がいた。
おれの後方から光が猫を照らす。
光源体が発していると思しき音に強い恐怖のようなものを感じると同時に、体が動いた。
向かいの電柱に肩をぶつけた直後、一台の車が猫のいた場所を走った。
「大丈夫? 怪我しなかった?」
腕の中の猫に問う。
猫は嫌がるようにおれの胸を蹴り、走り去った。
その姿は体に不調がある猫のそれではなかった。
おれは はあと先程までの緊張感を吐き出す。
「よかった、無事でなによりだよ」
三年前に腕の中で眠った神へ、腹の中で礼の言葉を告げる。
おれがこれほど機敏に動くことができたのは彼のおかげだ。
本来のおれは、持久力はあるが瞬発力はない。
一切の迷いも抱かずにこの道を歩いているのも神のおかげだ。