ゲーム機の下画面に「開始」と表示されてからは、宮原を緊張感とともに静寂が包んだ。
おれはボールペンのようなタッチペンを回し、特別になにを考えるでもなく闘いを進めた。
結果、おれのゲーム機の画面に「勝」と表示された。
宮原のゲーム機の画面には「敗」と表示されているはずだ。
「廉、お前まじなんだよ。天才かよ。プロかよ」
「おれには半分ばかり中国の血が流れてるからね」
「うるせえ。囲碁の発祥は中国じゃない説もあるらしいぞ」
「なら、もう才能の問題だね」
笑顔で言ってやると、宮原は「こいつまじうぜえ」と一瞬目を見開いた。
「よっしゃ、じゃあもう一回勝負だ。そう簡単にこのおれ様に才能がねえとか言わせねえし」
「おれは一回勝ったくらいでは相手に才能がないとまでは言わないよ」
「なんだよそれ。なんかまるでおれが何回も廉に負けてるみたいじゃねえか」
「実際そうじゃん。宮原、本当に弱すぎ」
「うるせえ、次は貴様の完敗だ」
「一度でいいから宮原に負けてみたいよ」
「はいはい、こっちは一度でいいから廉に勝ってみたいですよ」
まじでそれが次だからと力強く宣言する宮原へ、おれはその言葉はもう何度も聞いたよと笑い返した。