「十七年前の四月末、わたしは入野家に長女として生を受けた。
生まれたのは夕刻、当時の空が夕焼けで美しかったとの理由であかねと名付けられた。
四歳になる頃には、わたしは五人の妹の姉となっていた。
わたしの誕生から一年後、一人目の妹が生まれた。
その翌年に二人目の妹が誕生。
その翌年には、二卵性の双子で二人の妹が生まれた。
さらにその翌年、一人の妹が誕生」
入野あかねは静かに炭酸飲料を飲んだ。
「入野家には、常に人間がいる。
家族と関係者が全員揃えば、十五人。
どういった肩書きの元で働いている人なのかは知らないけれど、
わたしたち娘六人に一人ずつ、学校などに行っている間を除いてつきっきりになる人がいる。
さらに、父親と彼が仕切る世界、そして入野家を支える人――執事が一人。
あとの二人は両親。
父親は会社を経営している。
わたしは確かに、いわゆる社長令嬢というもの」
意外と普通な人間でしょう、と入野あかねは苦笑した。
前から社長令嬢とは知ってたからなんとも、とおれは返す。