入野あかねは五百ミリリットルの炭酸飲料を手に戻ってきた。
「お前もかわいいもの飲むんだな」
「飲む?」とそれを差し出す彼女へ、「おれ炭酸飲めないから」と返す。
「……なんで炭酸嫌いなの?」
「しゅわしゅわするじゃん」
「それが炭酸じゃない」
「だから嫌いなんだよ」
ふうんと興味なさげに頷き、入野あかねは炭酸飲料を開栓した。
「その開けるときのぶしゅんも嫌い。開ける前には開けるって言えよ」
開けるよと呟く入野あかねへうるせえよと食い気味に返す。
「ねえ」
入野あかねは静かに沈黙を破った。
「なにを言っても……笑わない?」
「笑わない――?」
「くだらないとか言わない?」
「ああ、言わないし笑わないよ。望みにくだらないもなにもなかろう」
「ふうん……」
ならいいけど、と入野あかねは小さく続けた。