「しかし廉くんは体力がないね」
宮原は菓子パンを咀嚼しながら笑った。
「これも少し前からなんだぞ。小学生の頃なんかは、囲碁が強いことの他は持久力が高いことだけが自慢だったんだ」
「へえ。廉くん囲碁強いんだ? ピアスの罰ゲームの話で言ってた強いボードゲームって囲碁のこと?」
「ああ」
おれはパンの封を開け、小さくかじった。
「宮原はなにか強いゲームの分野ってあるのか?」
「ないよ。まあ強いて上げるなら、トランプのさ、カードを真ん中に右と左に一枚ずつ、自分の前に四枚横に並べところから始まる、数字を一つずつ上げたり下げたりするやつかな」
「ああ、あれか。名前なんて言ったっけな。おれ、あれ大嫌いだった。絶対手に持ってるカードが爆発したからな」
「えっ、なんで爆発するの?」
「一枚ずつ出せなかったり、少しずつ手の中でばらばらになっていったりして、最終的にはどっかんだ」
「へええ。ぜひ戦ってみたいものだね」
「冗談じゃない。おれはカードゲームが嫌いだ。ボードゲームならいくらでも相手をする」
宮原はパックの野菜ジュースを一口飲み、笑った。
「廉くんって負けず嫌いなんだね」
「自覚はないが、負けるより勝つ方が楽しいだろう」
それを負けず嫌いって言うんだよと宮原は苦笑した。