帰り道の途中、おれはコンビニに寄った。
五百ミリリットルのパックの飲み物を買うためだ。
学校からほど近いそこには、何名かおれと同じ制服を着た者がいた。
求めている品を取り、一歩下がったときに人とぶつかった。
「すみません」と振り返ると、ため息が聞こえた。
「この最悪な展開は何度目よ」という低い声と鋭い視線が続く。
「なんだ、入野あかねかよ」
「なんだとは失礼ね」
入野あかねは言いながら腕を組んだ。
「入野あかねもしつこいな。このまま遭遇を重ねたら、他人にぶつかった際に謝罪の言葉を忘れてしまいそうだよ」
「なによ、相手がわたしだったら謝らなくてもいいだなんて考えているわけ?」
「おれは入野あかねより上の立場だ」
「はあ? なにをどう考えたらわたしが紫藤 廉なんかよりも下の立場になってしまうわけ?」
「言っただろう、おれは天才だ。入野あかねのような凡人と同じ類へ葬られては困る」
「葬る……。わたしは死んでなんかいないわよ」
「死んでるようなものだろう、自分の意思に嘘をつているようでは」
「……はあ? 自分の意思に嘘なんかついてないわよ。紫藤 廉が大嫌いであるという――」
「もっと」
おれは入野あかねの言葉を遮った。