教室では、宮原がおれの席にいた。
「やあ、廉くん。今日は遅かったね」
「まあな。物分りの悪い女に理解を求めていたらあまりに時間が掛かってしまった」
「ほう……」
なにか言いたげな宮原へ、「深く訊けば日が沈むぞ」と告げる。
「それよりここを退き給え」
「ああ」
ごめんごめんと彼はおれの席を立った。
「今日は廉くん休みかと思ったよ」
「……なに、困るか」
「いや、そんなことはないけど」
「そうか」
複雑だなと苦笑すると、宮原はいやいやと笑った。
「嫌でしょう、確かに友人でしかない相手にいないと困るとまで思われてたら」
「そうか? 別に嫌じゃないけど」
「ええ……? 友達だよ?」
「ああ、友達だよ」
「ええ……? なんか、廉くんとは友達の感覚が違うのかもしれない」
「そのようだな」
隣の席に気配を感じて目をやると、言葉では表し難い初めての光を宿した入野あかねの目と視線が重なった。