月曜日、上履きを放ると、後方から「もう本当に最悪」と聞き覚えのある声が聞こえた。
入野あかねだった。
「ああ、入野あかねじゃねえか。お前どれだけおれのこと求めてんだよ」
「紫藤 廉、本当に気持ち悪い。このわたしがあなたを求めているだなんて、それ、本気で言っているの? それならば大きな病院を受診することをおすすめするわ」
「気持ち悪いと言っても仕方ないだろう。入野あかねの深層心理みたいなのがおれを求めてるんだから」
「あなた本当に馬鹿なんじゃないの?」
「馬鹿なのは入野あかねも同じだ。なにゆえにそこまで己の本音に気がつかない?」
「うるさい。気がつかないもなにも、わたしの本音は紫藤 廉が嫌いである、それ以外にはなんにもないの」
「ならばなんでこんなにも頻繁に朝っぱらから会うんだ」
「わたしが紫藤 廉を求めているのではなくて、紫藤 廉がわたしを求めているのではないの?」
「それはないな。おれは入野あかねがいなくても問題ない」
「わたしだって紫藤 廉がいなくたってなんの問題もないわよ。本当に、本物の馬鹿なんじゃないの? 紫藤 廉が馬鹿すぎてもう、わたし理解ができない」
とにかくもうわたしに構わないでと残し、入野あかねは教室へ向かった。
おれはその背を追い、彼女の隣に着いた。