おちゃまるを抱いてリビングへ入り、作業をする母親へ「おちゃまるふわっふわ」とおちゃまるを見せつける。
「めっちゃめちゃかわいくね?」
おつかれ、とおちゃまるを下ろすと、彼は自由に歩き回った。
「大丈夫? 廉、おちゃまるさん満足させてあげられた?」
「たぶんな。大丈夫だと思うよ。まあ風呂で疲れさせちゃったろう」
「そう」
母親は両手に持っていたペンチのようなものをテーブルへ戻した。
「かわいくない?」と出来上がった耳飾りを見せる。
紫色の花がついたものだ。
「まあ……そうな」
「廉は新しいピアス要らないの? 今着けてるのしか持ってないでしょう」
「……ああ、おれはいいよ」
「罰ゲームで空けて塞ぐのがもったいないと思ったんでしょう?」
「まあそうなんだけど……」
「だったらいろんなの着けた方が楽しくない?」
「いや、これでいいんだ」
これ気に入ってるし、とおれは左耳のピアスに触れた。
黒色の石がついた、ピアスとしては至ってシンプルなものだ。
しかし高校生が着用しているものとなると、それはこの左耳で充分すぎるほどの存在感を放っている。
もう少し目立たないものにすべきだっただろうかと考えたときもあったが、不可思議な現象のために変えることはまず不可能だ。
「……そういえば、神は元気かな」
おれは神の眠る箱へ目をやった。
「元気じゃないかな? 天国には病気も苦しみもないはずだし、今までのラビさんもスクワーさんもいる」
「……そうだね」
左耳を飾るピアスを触りながら、おれは複雑な気持ちになった。