おちゃまるのシャンプーは、だいたい順調には進まない。
かなりの確率でおちゃまるが体を震わせ、泡を浴びる。
それは今回も例外ではなかった。
「……本当、おちゃまるだとなにをされても許せるね」
仮にこれが十年以上生きた人間だったら一発はなんらかの攻撃を食らわせている。
よしよしと繰り返しながら、おれはおちゃまるを洗った。
「ほんっとにかわいい顔してんな、おちゃまる。なんだこれ」
気持ちよさげに目を細めるおちゃまるを眺め、「本当にかわいい」と無意識にこぼす。
「流すよ」と声を掛け、シャワーヘッドから出るものが温まった頃に、そっとおちゃまるの泡を流す。
もう少しだからねと言い切る前に、おちゃまるが体を震わせた。
抑える間もなく発した「まじか」という声には笑いが混ざっていた。
「もう少し頑張って、ごめんね」
もう少しもう少しと繰り返しながら、おれは手早くおちゃまるの泡を洗い流し、彼の体を乾かした。