まだ散歩を続けたいとでも言うようなおちゃまるを連れ、家を出てから一時間後、おれは自宅の玄関を開けた。

リビングの母親へ「ただいま」と声を掛け、おちゃまるを抱えて風呂場へ向かう。


彼の足を丁寧に洗った後、柔らかいタオルで軽く水分を拭き取り、ドライヤーの冷風でよく乾かした。

ついでに、脱衣所の棚からおちゃまる用のはさみと爪切りを取り、おとなしいおちゃまるを抱え、ごみ箱の上で彼の爪と肉球の周りの毛を切った。

あまりに愛らしい足元に、爪や毛を切りながら自然と口角が上がった。

「おちゃまるくん、君ほんとにかわいいな」

最後の足が済み、状態を確認する。

「よし、おつかれさま」

おちゃまるの首元をくすぐるように触り、「戻ろうか」と脱衣所を出る。

おちゃまるは静かにあとをついてきた。

リビングの向かい側にある部屋へ入ろうとする彼を「こっちこっち」と呼び、ともにリビングへ入る。

「今週の土曜日にでも風呂入ろうな」