半分ほどの時間を歩いた頃、おちゃまるがなにかに反応を示した。
彼の視線を辿った先には、近所に住む「みっさん」という愛称を持つ六十代くらいの女性と、彼女の家にいる白い犬――「よもち」がいた。
名前の由来はみっさん夫婦が好きなよもぎ餅だと過去に聞いた。
よもちは当時から緑色の首輪を着けており、ものは変わっているが今のそれも緑色だった。
「あらら、廉ちゃん? 久しぶりねえ」
「ああ、みっさん」
「最後に会ったのなんていつだったかしらねえ。元気してる?」
「はい、まあそれなりに」
「あらそう。ずいぶん素敵な男になっちゃって。いくつになったの?」
「今……十六歳、高二です」
「そう。大きくなったねえ」
こんなにちっちゃかったのに、とみっさんは自身の腰の辺りで手のひらを下に向けた。
「ずいぶんとまたかっこよくなっちゃってねえ」
「とんでもないです」
おれは苦笑し、首を振った。
「いやあ、本当に素敵男子よ。こんな男の子が孫なんかじゃ、自慢よね」
恐縮です、とおれは軽く頭を下げた。
「……では、また……」
おれが言うと、みっさんは「ああそうだ、あたしもこれから夕飯の材料買いに行かなきゃいけないんだった」と笑った。
「それじゃあまたね」と手を振るみっさんへ、「はい、また」と軽く頭を下げた。