「いやあ、いやいや。入野さんおっかないねえ。廉くんをあんなにも派手に振るとは」

おっかないおっかない、と宮原は苦笑し、腰に手を当てておれの席の前に立った。

「一つ訂正させろ。おれは決して振られたわけではない」

またまたあ、と彼はからかうように笑う。

「入野さんに興味があって接触しようとしたところをあの勢いで突き放されたんでしょう?」

「まあ……なんか嫌われてるらしくてな」

おれが苦笑すると、宮原は「見ていればなんとなくわかるよ」と同じように笑った。

「廉くん、入野さんになにをしたのさ」

「嫌われるようなことをしたつもりはないがな。本人曰く、おれのような頭の空っぽな人間が嫌いなのだと」

「へえ……。入野さん自身、それほど賢そうには見えないんだけどね」

「おれも人のことを言えるようなやつじゃないが、宮原も言葉のオブラートというものを知らないよな」

まあご本人いないしと苦笑する宮原へ、心を浄化してこいと笑い返す。

「入野さん、おとなしそうに見えるのにね」

「……まあ、人は見かけによらないってやつだろうな」

「見た目通りの性格だったら、入野さんって絶対もてる人だよね」

「そうなのかな……。もうあの凶暴な部分しか知らないからそんな想像も……」

「廉くんも充分にオブラート知らないよ」

「……まあ、ご本人いないし」

心を浄化してこいと笑う宮原へ、一緒に行こうぜと同じように返した。