しばらく話して宮原が自席へ戻った直後、隣の席に大きな音とともに鞄が置かれた。
「くだらない」と席の主は呟く。
「入野あかね……」
おれは主の名を呟いた。
彼女はこちらへ鋭い目を向けた。
どこからともなく敵意のようなものを感じる。
「馬鹿みたい。異能力だとか超能力だとか、前世だとか来世だとか。そんなもの、あるわけないじゃない。よくもまあそんなことを真剣に」
入野あかねは吐き捨てるように並べた。
おれは苦笑する。
「わかってるって、もちろん。もしもあったら面白いなって話だよ」
「仮に本気で話していたのならば小学校からやり直しね。
まあ、あるわけがないと理解していながらもああいった事柄について語り合えるぶっとんだ空想家である時点で、小学校からやり直した方がいいようにも思えるけど」
「おやおや、入野あかねお嬢様は頭がおかたいようだねえ。どれだけ学問を極めようとも、おれのような馬鹿は治らないよ」
「ならば生まれるところからやり直せばいいわ」
おれは思わず噴き出した。
「入野あかねも十分すぎるほどにありえないようなことを考えるじゃねえか。さっきから言いたかったが、小学校をやり直すことはできないよ」
おれが言うと、入野あかねはなにかを言いかけて目を逸らした。