帰宅後、おれは神の写真を眺めた。

「……母さん」

おれは呟くように言った。

写真立ての中の神に触れる。

どうした、と母親の声が返ってきた。

「神様って、本当にいるのかな」

「よくわからないけど、いるんじゃないのかな」

たぶん、その人の心の中に――。続けられた言葉にどきりとした。

「神様の存在を信じるかどうかじゃないのかな」

そうかと返し、質問の理由を問う母親へなんとなくと返した。

「……この神は、神様だったのかな」

写真立ての中の神を撫でながら言った。

「どうだろうね。神さんは神社にいたし、もしかしたら神様だったかもしれないね。廉は神さんが神様だと思うの?」

「わからない。だけど……なんとなく」

「人の直感は当たるものだよ。お父さんがよく言ってるでしょう」

「父さんな、確かに。一時期は口癖みたいに言ってたな」

おれは口角を上げて返した。


複雑だった。

仮に神のなにかがおれに宿っているのであれば、彼は深い眠りには就けていないのではないかと考えた。