「一瞬、激しい胸痛に襲われた」
「えっ、なんで」
「知ったことか。そんなものおれが知りたい」
「ピアスで胸痛……?」
「で、一度目のそのときは意識を失った。気づいたときには、罰ゲームではなく罰ゲームをなかったことにしようとした、意識を失う直前のおれの行動がなかったことになっていた。
外したはずのピアスは何事もなかったかのように左耳へ帰ってきていた」
「ほう……」
「で、二度目に挑戦したときにはなにも起こらなかった。しかし、その頃にはホールを塞ぐのがもったいないように感じてしまっていた……」
言葉を並べながら顔が熱くなり、おれは一度目元を手で覆った。
「ファーストピアスを外す目的が、一度目のときから変わっていた。
それで、いわゆるセカンドピアスというものを着けてしまい今に至る。
ただ、ピアスを変えてから今に至るまでに何度かホールを塞ぎたいと思うことがあった」
「なら塞げばいいと言いたくなっちゃうけど……」
そうもいかないんだろうねと苦笑する宮原へ、その通りだと返す。
「ピアスを外す際になにも起こらなかったのは二度目のあのときだけだった。三度目以降は必ず胸痛に襲われた」
「ふうん……。本当にいろいろあったね。それより、胸痛の原因はなんなんだろうね」
宮原は、「知識のない僕からすればなんの関係もなさそうだけど」と顎に手を当てた。
「不思議だよな」
おれは思いついた言葉を返した。
ピアスを外した直後の胸痛のあと、意識を失ったのは一度目のあのときだけだった。
二度目に無事に外せた次から毎度起こる胸痛のあとのことは、おれ自身も信じたいものではない。