放課後、校門まで歩いている間、宮原は「あれ」と呟いた。
「廉くんってピアスなんかしてたんだね」
「ああ……。ちょっと、いろいろあってな……」
「ほう。いろいろ、というと?」
「そのままだよ。いろいろあったんだ、実にいろいろと」
「話したくないのなら無理に話す必要はないけど、そう言われると気になってしまうのが人間の性だよね」
おれは一度、深く呼吸をした。
「これができたのは中学校二年生の頃だ」
「えっ、中学生で空けたの? 早いね」
「ああ。それも望んでもいないのにだからな」
「ほほう。実に興味深い」
大した話じゃないよ、とおれは苦笑した。
「中学校二年生のある日、おれは君と名前だけそっくりな幼なじみと、席が隣だった男の友達と三人で遊んだ。
そこで、おれが苦手とするカードゲームをやることになった。今思えば、考案者がピアスに興味があったのだろう」
「なんだかもう嫌な予感がするよ」
小さくこぼす宮原へ、「その予感は恐らく当たるよ」とおれは返した。
「考案者は言った。『おれ超面白いこと思いついたわ。このゲームで負けたやつの耳にピアスホール空けねえ?』みたいなことを」
うわうわ、と宮原は笑った。