「ねえねえ、廉くんって今までに付き合ったことってある?」
昼食中、宮原が言った。
「異性とってことか?」
「そうそう。僕、よく訊かれてきたんだ」
「へえ。え、宮原は実際どうなんだ?」
「僕? 僕はないよ。嬉しいことに、女の子にもてそうだと言われることはよくあるんだけど、実際は悲しいことにまったくもてなくてね」
もてそうだと言われることを喜ぶべきだね、と宮原は苦笑した。
「それで、廉くんはどうなんだい?」
「ああ、ないよ。そもそも近くに女がいなかった」
「へえ。ずっと男子と一緒にいたの?」
「ああ。反対に、近くに女なんていたか?」
いや、と宮原はかぶりを振った。
「いなかったよ。だから、告白されたことがなければ告白をしたこともない。恋愛経験はゼロだよ」
「おれもまったく同じだ」
宮原とは気が合うなと笑い、おれは売店で購入した惣菜パンをかじった。
そんなふうに思ってくれる人がいるなんて嬉しいよと宮原も笑う。
彼もおれと同じ惣菜パンをかじった。