感覚と試行の結果に複雑な思いを抱きながら、おれは自転車を押して一人の帰路を歩いた。
家に帰ってから、おれは神の写真に「ただいま」と告げた。
「おかえり」と言う母親へ「ただいま」と返して床に鞄を放ると、おちゃまるが静かに寄ってきた。
「ただいま、おちゃまる」
おれはおちゃまるを撫でながら、彼がいなくなることが怖くなった。
おちゃまるへ意識を集中させ、心の底から念じた。
おちゃまる、君は長生きしてくれ――。
その日、おれはさらに母親の翌月の収入が普段の倍になることを念じた。
それが現実となれば、自分の感覚を信じられると思った。
翌月、母親の収入は実際に倍になった。
自分が神であるかどうかは定かでないが、自分にとって神という曖昧な存在が近づいたのは事実かもしれないとどこかで思った。
隣の席の男子生徒と宮原との三人で遊び、罰ゲームでピアスホールを空けられたのは、母親の収入が普段の倍であった月の翌月頭のことだった。
罰ゲームの内容は市販のピアッサーでピアスホールを空け、学校の者に一か月間そのホールとファーストピアスの存在がばれなければいいという、実にくだらないものだった。
その罰ゲームを賭けたカードゲームにおれは見事に負け、二人の友人の手により左の耳たぶにピアスホールを作られることとなった。
一か月間、母親を除いて誰に知られることもなく、ピアスもホールも自由にしてよくなった頃、おれは自室でピアスを外した。
直後、心臓が激しい痛みを伴いながら一度大きく跳ねた。