入野は「紫藤」と叫び、派手な洋風な門扉のそばでなにかを操作した。

やがてその門扉が動き出し、入野は僅かな隙間からこちらへ出てきた。

おれの前にしゃがみ、頭や体を撫で回す。

おれは、やめろそうじゃないと告げる代わりに口で入野の手を追った。

「紫藤……神ちゃん……」

ありがとう、と震えた声を続けると、入野は笑顔で、大粒の涙で頬を濡らした。

「入野、首輪を外してくれ」

「首輪?」

わかったと頷くと、彼女は涙を拭い、「外すよ」と宣言してから首輪を外した。

慣れない痛みと感覚が胸元を襲う。

「びっくりした」と地面に尻をつく入野を、おれは呼吸を整える前に抱きしめた。

いつの間にか震えていた喉で入野の名を呼ぶと、頬に温かみを感じた。