おちゃまるに眠気が現れた頃、おれは彼を解放し、ダイニングチェアに腰掛けた。
己のどこかにも眠るはずの神に力を貸してくれと語り掛けながら、入野の幸せをひたすら願った。
起きろという父親の声で、無意識に腕を枕にしていた頭を上げた。
照明の眩しさに目を細める。
空腹を誘うような匂いが嗅覚を刺激した。
「え……なに?」
「大丈夫か、廉。いつからいたんだ?」
「朝の五時半頃。目が覚めたんだ」
そうか、と父親は一言で頷いた。
「どこか体調でも悪かったのか?」
「いや、別に。なんで?」
「おれが起きた頃からずっとそこで寝てるから。もう夕飯できるぞ」
一気に眠気が覚めた。
言葉を選ぶ間もなく、父親へ「まじかよ」と返す。
時間を確認しようと携帯電話を求めてジャージのポケットを漁るが、中にはなにも入っていなかった。
「携帯……」
上か、と独り言を続け、おれは席を立った。
リビングを出て廊下を走る。