おれは布団の上にあぐらをかいた。二度寝ができる余裕はなかった。

確認した携帯電話は、土曜日の三文字とともに五時三十分という時間を知らせた。

いざというときは助けてね笑う入野を鮮明に思い出す。

おれは深く呼吸した。

大丈夫、おれは神だ、おれには神社で出逢った黒猫の特別なものが宿っている――。

ざわつく胸元に言い聞かせた。


ふと、衝動に駆られておれは部屋を出た。

階段を駆け下り、リビングで小さな箱の中に眠る神の前に立つ。

おちゃまるは、おれの気配を感じたか足元に寄ってきた。

「ごめん、起こしちゃったね」と彼を撫でる。

おれはすぐに立ち上がり、神の写真を見つめた。

指先でそっと写真の中の神に触れ、目を閉じる。

神、頼む、力を貸して――入野を幸せにしてくれ――。

静かに神へ語りかけていると、おちゃまるが足の間に入ってきた。

目を開けて写真から指先を離し、「どうした?」とおちゃまるへ声を掛ける。