「入野さんのこと、ずいぶん気にしてるね」
宮原は空いた左手にペットボトルを持って言った。
「入野さんのことかい? 寝不足の原因である考えごとと願いごとというのは」
「まあ……」
おれは前を向き直ってパンをかじった。
「なに、入野さんと自身との間に格差でも感じてるの?」
「そんな程度のことならよかったな」
宮原はほうと目を大きくした。
「その程度のことなら、おとなしくしておけばいいだけだ」
「廉くんには自分の願望を叶えようという気はないのかね」
「それしかない。だから今考えごとをしている」
「ふうん……。まあ、悩みごとは同じ経験をした者にしか理解できない――。僕に手伝えることはなさそうだね」
「そんなことはない」
昼食助かった、とおれはパンを持つ右手を少し上げた。
それはよかったと宮原は優しく目を細める。