「母親は、幼少期より日本が好きだったという。

その両親も日本に興味があったらしく、母親本人はそれも影響しているだろうという。

父親は純粋な日本人だ。おれと違って外国語が得意で、旅館に勤めたのもその語学力を活かしたかったことが動機だと過去に聞いたことがある。

母親、父親、二人が出逢ったのは父親の勤める旅館だったらしい。母親が旅行で日本を訪れた際、宿泊先に父親の勤める旅館を選んだという。

その後、二人は特別な場面もなく交際を始めた。後に、母親は結構な時間を掛けておれを授かった。

そして十七年前の十二月、おれが紫藤家の長男として生まれた。清廉潔白という四字熟語を由来に廉と名付けられた」

「へえ、清廉潔白が由来なんだ。名前負けしてないのね」

「そうか? 心が清らかで私利私欲を持たないとかって意味だったはずだぞ」

「紫藤はそういう人だよ。お人好し」

「まあ、それくらいでありたいと思ってるから嬉しいけど……」

「その他にも痛くて寒いところもあるけどね」