入野はぶどうジュースを買って戻ってきた。
よっこいしょとおれの隣に腰を下ろす。
「で、紫藤はどんな子供だったの?」
「まあ……そうだなあ……」
知りたいよなと問うと、入野はもちろんと笑顔で頷いた。
「知りたいんだよな、入野は。己を神だと思い込む危険人物の過去を」
「そんなふうに興味を掻き立ててくるということは、相当な過去をお持ちで?」
「……すごい人の経歴って、意外と普通なものだったりするじゃん」
「それでも構わない。わたしはただ純粋に、紫藤の過去が知りたいの。言ったでしょう? 女の子は、特別な存在の人のことを知ることができるだけで、すっごく嬉しくなれる生き物なの」
おれはふっと笑いをこぼした。
かわいらしい生き物だと思った。
「聞いて後悔しても知らないぞ」
「後悔なんかしない。紫藤のことだもん」
はいはいとおれは苦笑した。