昼休み、おれは普段あまり買わないパンをかじった。
教室を出ていく入野の背を眺める。無意識だった。
「『なになにくんすっごいかっこいいんだけどお』みたいな?」
宮原はからかうように言った。
おれは彼の方を向き直る。
「なにが」
「いいや? なんか、まるで恋する乙女のような目で入野さんを見てたから」
「恋――乙女じゃねえし」
「恋する、は否定しなかったように思えたけど? つまり廉くん……」
「ああ、うるせえうるせえ」
はははと宮原は笑った。
「ところで廉くん、入野さんの言動の意味はわかったかい?」
宮原は怪しげに口角を上げる。
「……わかった、というか……」
「わかったんだね」
宮原はふっと表情をやわらげる。
「大丈夫、今回こそは間違えてないと思うよ。なんとなく、廉くんの予想はわかる」
「言わずとも考えていることが伝わるとは、お前は本当に感受性が豊かだな」
「まあ、廉くんよりましであるのは事実だよ。廉くん以下の人はたぶんいないからね」
「馬鹿野郎、あまり変なことを言い切るのはよせ。いたら失礼だろうが」
宮原は苦笑した。
だって本当にいないもんと呟く。