「なになに、紫藤も宮原も楽しそうじゃねえか」
ふと、おれの隣の男子生徒が言った。
「ああ、ちょうどいいところに現れやがったな。お前ってさ、自分を神だとかって思ったことってあるか?」
宮原は言った。
「えっ、なんで? カミって神様のカミだろ? あるわけないだろう」
「やっぱりそうだよな」
宮原は苦笑した。
「えっ、なんでそんな面白いことを?」
「いや、なんでもさ――」
言うな、と宮原を止めたつもりの声はまともに働きもせずに消えた。
「廉がなんか、最近そう思うんだって」
宮原は笑いながら言った。
「へええ、紫藤ってそういう系だったんだ……うける。思い切り患ってんな」
「やっぱりそうなのか……。中、中……」
「二……」と続いた宮原に、隣の席の男子生徒が「病」と続いた。
「たぶんあれだろ、神だと思っちゃうレベルにまで極めちゃってるのは鈴木と中野くらいだろ」
「廉もあいつらの仲間入りか……。しかも自覚症状出てからそんなに経ってないのに」
宮原が言った。
「まあ、たぶん鈴木と中野にも自覚症状ないと思うけどな」
「えっ、待て。じゃあ、自覚症状のある廉は……?」
別のなにかかもな、と男子生徒は笑った。
「なんか、神にしかできないことでもやって試してみれば?」
宮原はからかうように言った。
「もしも……もしもだぞ。もしも、廉がまじで神様だったら、ちょっとこれから接し方変えねえとならねえし」
宮原の言葉に、男子生徒は「そう考えられるあたり、宮原も何気に鈴木たち寄りだな」と笑った。