頭に硬いもので叩かれたような痛みが走って目が覚めた。

基本的に温厚である男性教諭の声が聞こえる。

「なんか痛い……」

おれは痛む箇所を押さえて頭を上げた。

「寝るな、紫藤」

「おれ夜行性なんです」

「夜ふかしするからだろう」

知らないが、と男性教諭は続けた。

「ていうかこれ、おれが騒いだら大事ですよ、この時代」

「眠気の原因は知らないが寝るのが悪い」

男性教諭は咳払いをし、黒板の前へ戻った。


おれは頬杖をついてノートの隅をシャープペンシルで黒く染めた。

何気なく隣の席へ目をやると、微笑む入野と視線が合った。

猫という名前の由来って知ってる?――。

何度か繰り返してもらったあと、彼女の口の動きが読めた。

当然だ――。彼女には一度で伝わった。

よく眠るからだ――。

さすがねと口を動かし、入野は声を出さずに笑った。