「そのイリノって人はかわいいのか?」

「ああ、まあ……見た目は結構だと思うよ」

おれは言った。

「へえ。どんな感じ?」

「髪が長くて、目が丸くて、顔が小さいせいかその目がでかく見える。背は平均より少しあるくらいで、まずおれとは違う性別だなと思うような体」

「へえ。スタイルいいんだ?」

「いや……それは別に普通じゃないかな。おれが言いたかったのは、守りたくなるような体つきってこと」

「ああ、細いのな。ならそう言えよ」

変な想像したじゃねえかとおのっさんは笑う。

「で、レンはそのイリノをどう思ってるんだ? 好き?」

「別に嫌いじゃないけど……。普通の友達かな」

「へえ。かわいいと思う瞬間はないのか?」

「なくはない。むしろ度々思うけど……」

「好きじゃないのか?」

「好き……まあやっぱり、嫌いじゃないけどって感じ」

「へえ……」

おのっさんは小さく笑った。

「それ、好きじゃねえの? 好きでもない女の子をかわいいとか思わねえだろ」

「……そうか? 見た目はいいけどこういう性格の子好きじゃねえんだけどみたいなこともあるだろう」

「まあそうだけど。レンはイリノの性格好きじゃないのか?」

「いや……嫌いじゃないけど」

「じゃあ、やっぱり好きだよ。今はそうじゃないにしても、そのうち好きになる系だぞ、それ。これでイリノの方がレンのこと好きとかだったらおもしれえのにな」

おのっさんが言い終えた直後、宮原は小さく咳き込んだ。

「なんだ、風邪か?」

おのっさんの声に、彼は「いや、大丈夫」と頼りなく返す。