おのっさんには、二度目の対局でも負けた。

一度目より差は小さかったが、確かに負けた。


「いやあ、やっぱりレンに勝つのは面白いな。途中、何回もはらはらする」

大の字に寝転び、おのっさんは楽しそうに言った。

「おれはおのっさんに負けるのがかなり悔しいよ」と返す。

「途中で何度も勝てるかもしれないと感じさせられながら、最後には結局負ける。おのっさんに勝ったのは、前回、引き分けのあとの一度だけだ」

「それだけおらが強いんだよ」

「まあ強いのは否定しないけどさ」

おれが苦笑すると、宮原は「本当に強いよね」と笑った。

「もう化け物だよ、ここまでくると」

最高の褒め言葉だとおのっさんはにやりと口角を上げる。


「そういやさ、レンって好きな人とかいるのか?」

おれが窓の外、遠くの建物の屋根から飛び立つ鳥を見送ったあと、おのっさんは言った。

「いや、いないよ」

「へえ。かわいいなあと思う子とかは?」

「ああ……。普通というか、素直にしていれば男受けよさそうなのにもったいないなと思うやつはいる」

入野さんだねと宮原は言った。

鋭いなと返すと、廉くんよりはまともな感覚を持っていたいからねと笑われた。