「けっ。せっかく凡人にもわかりやすいように説明してやったのに。
ていうか、勉強は努力だけなんかじゃどうにもならねえよ。それならおらもお前と同じ三高にいる」
宮原は「基本的にと言ったでしょう?」と笑った。
「凡人にもわかりやすいようにと言うけど、別に僕はおのっさんたちの言葉が理解できないことに劣等感なんて感じてなかったよ」
「てめえ、本当に生意気な男だな」
「ちょっと生意気なくらいが生きてる方は楽しいんだ」
「おらは本当に生意気な男だと言ったんだぞ、ちょっとなどとは一ミリも言っちゃいねえ。お前ほどの生意気は、人様の心に苛立ちを募らせるんだよ」
「苛立ちを感じるなら感じさせる方が幸せだね」
「てめえ最低だな。お前には利他的な部分はねえのかよ」
「僕はわがままで自己中心的な人間なんだ」
「どんなことを誇りに思ってやがる。わがままで自己中心的な人間は多くの人に嫌われるんだぞ。それを理解しても尚、自分のそれをそんなふうに語れるか?」
二人の間を行き交う言葉を聞きながら、おれは笑った。
この二人は本当に仲がいいのだなと思った。